本文
令和4年度が始まるにあたり、町政の基本姿勢について、所信の一端を申し述べます。
昨年は、町としては一昨年から続く新型コロナウイルス感染症への対策を継続する一方で、役場の機構改革や新庁舎への移転など、新体制での業務運営が始まり、外部環境としては、国の経済安全保障政策である世界大手の台湾半導体メーカーTSMCの町境付近への進出、空港アクセス鉄道の整備ルート案の再検討など、町の未来に大きく関わる動きが複数ありました。
さらに、令和5年には南阿蘇鉄道のJR肥後大津駅への乗り入れ、新熊本空港ビルや東海大学臨空校舎の完成なども予定されており、令和4年度は関連する企業の進出や町の人口の増加もさらに加速することが予測されます。
大津町が人口減少にある日本において、持続可能な町であるため、あるいは成長へと向かう町であるためにも、この一年が大変重要な年であると認識しています。
特にTSMCに関しては、既に町内においても新たな企業進出や宅地・集合住宅の開発などを模索する動きが急加速しています。こうしたなかで迅速かつ的確に対応していくために、町としても昨年、庁内に推進本部およびプロジェクトチームを立ち上げ、工業用地や生活環境、渋滞対策などの想定される様々な個別分野に対して所管横断的に検討や取組みを進めています。また、広域的な視点も必要であるため、国・県とのやり取りはもちろん、現在菊池郡市の2市2町でも「菊池地域行政連絡会議」を設けながら取り組んでいます。
より細部については各個別方針でも述べさせていただきますが、この機を生かして新たな企業誘致につなげることはもちろん、従業員の居住地としても選択いただくとともに町全体の活気や賑わいにつなげられるよう、道路整備やエリア開発などの先行投資も議会の皆様にも早期にお示ししながら戦略的かつ機動的に進めていきたい考えです。
こうしたなか、令和4年3月議会にまちづくりの羅針盤である第6次大津町振興総合計画の後期計画の議案を上程し、ご議決をいただきました。
基本構想については、議会の議決を得た8年間の連続性・継続性のある町の最上位構想であることを踏まえ、4年経過に伴う必要最小限の修正としています。長期化している新型コロナウイルス感染症は、各分野の事業に影響を及ぼしておりますが、引き続き感染拡大防止を進め、コロナ禍で苦境にある方々を支援しながら、一方で中長期の視点に立った歩みを緩めることなく、町の将来ビジョンの実現に向けた取組みを着実に進めていきます。
また、各施策につきましては、これまでの取組みの検証や指標設定の見直しを行うとともに、町を取り巻く環境の変化、町民アンケートの結果や町民懇談会等でいただいたご意見を取り入れながら策定しています。
冒頭述べました通り、町を取り巻く環境の変化が加速化しています。しかし、変化が激しい時代だからこそ、時には予算や戦略、戦術には柔軟性を持たせながらも、「町民参加と持続可能なまち」、そして「明るい未来の実現」に向けて、役場内はもちろん町民の皆様と今後の大きな方向性をしっかりと共有しながら協働して進めることが重要だと考えています。
計画策定後もしっかりと協働して一つひとつの取組みを進めていけるよう、進捗状況などを継続的に発信しながら進めていく考えです。
次に、私が就任以来掲げております方針について述べさせていただきます。
まず、「民間の知恵と活力を生かす」、「先進技術(ICT)や民間企業の業務手法の活用」、「具体的な制度と仕組化」、「強力なトップセールス」の4つは、私の基本方針であり、今年も一貫した考えとして町民の皆様にお示しするとともに、職員にはすべての業務に通ずる前提として、常に念頭に置いて業務にあたってもらいます。
ワクチン接種については、2回目接種率は86%で、高い接種率となっています。令和4年度もデジタルも活用した迅速かつ分かりやすい情報発信をしながらまん延防止に努めるとともに、3回目接種を推進し、12歳未満への接種についても迅速に対応できるよう準備を整えていきます。
町内の飲食、宿泊業については現在も思うように営業ができない状況が続いていることと思います。また、他の産業においても新型コロナによる影響は当然にあることから、適切な対策を迅速に講じていくことが必要であると考えています。この他、住民税非課税世帯や家計急変世帯を対象とした臨時特別給付金については、迅速に振り込み作業を進めていきます。
一方で、長引くコロナ禍において、コミュニティの維持、健康づくりや地域の活性にも寄与する地域活動が一部停滞している現状もあります。今後は、これまで地域に補助を行ってきました感染予防対策の備品等を活用していただき、3密を防ぐなどの工夫を講じたうえで、地域活動の再開に取り組んでもらいたいと考えています。
また、町としても昨年度以上に様々な場面でオンラインも活用しながら情報発信やハイブリッドでの会議等の円滑な運営に努めるとともに、非対面でも町や地域、団体、知人などとも繋がっていただく一つの手段として、スマートフォンに不慣れな方への講習等のサポートを行いながら、ウィズコロナの体制を一層強化していきます。
新型コロナの影響は町の福祉や子育て、産業などすべての事業の推進に大きく関わる事項ですので、引き続き、感染防止策はもとより、年齢層、ライフステージや業種に応じた支援策を総合的に講じていくことで、町民の暮らしと健康を守るとともに不安解消に努めていきます。
防災・防犯等に関しては平時に如何に備えておくかが重要です。まず、緊急時の物資調達に関しては、昨年12月に大手ホームセンターと災害対応物資、本年3月1日には石油関連の事業者と燃料に係る優先調達協定をそれぞれ締結しました。
また、昨年度に実施した防災無線音達調査を踏まえ、令和4年度は難聴地域に防災無線の新設等を行っていきます。また、地域防災については、消防団員報酬の見直しや運営交付金の創設を行うとともに、団と協議しながら機能別消防団の新設の検討を進め、時代と実情に合わせた消防活動を推進します。さらに、大規模災害も想定し、新たな防災士を養成することで平時から重層的に備え、地域における防災力の強化を図ります。
また、昨年度から2か年計画で、町内全域の街灯をより明るく長寿命なLEDへの変更や、危険個所へのカーブミラーの設置、白線の補修などを集中的に進めています。令和4年度も引き続き危険個所の改善を進めるとともに、後半の北部地域の街灯LED化を進めていきます。そのほか、河川や調整池の浚渫などは引き続き、国や県とも連携しながら計画的に進めていきます。
昨年度は、4月時点で待機児童が12年ぶりにゼロとなるなか、18歳までの医療費の無償化や病児保育の受け皿の整備を行うとともに、妊娠から子育てまで一貫して相談ができる子育て世代包括支援センターを設置しました。適切な運営を継続するとともに、情報発信や関係機関との連携をより強化しながら、重層的で切れ目のない子育て支援を行っていきます。
公立園については、充実した運営を行いながら、幼児教育や保育の質、および在宅家庭支援(セーフティーネット)の機能・環境を如何に向上させるかを念頭に置いたうえで、公立の認定こども園新設も見据えた「大津町公立保育等再編方針」を3月にとりまとめました。今後は、その実現に向けて、議会や町民、そして特に保護者の皆様への説明責任もしっかりと果たしながら丁寧に進めていきます。
次に教育環境については、これまでに小中学生に一人一台のタブレットパソコン配備を完了させ、新型コロナによる休校中のオンライン授業などを県内の市町村に先駆けて行ってきました。今後も感染予防としてのオンライン授業などに活用し、当初の導入目的であるSociety5.0、いわゆる人間がAIとロボットとともに生きる時代を生きていく子どもたちに相応しい最先端の学びの場を提供していくとともに、必要性が増している語学・国際教育についても推進していきます。
一方で、学校施設においては、校舎が老朽化しており、安全対策が喫緊の課題です。まずは令和4年度に、大津中学校の大規模改修に着手する予定です。校舎棟の改修に4年ほどの期間がかかりますが、健全な財政運営を行いながら計画的に進めて参ります。
子育て支援、学校教育の充実を図ることにより、未来を担う子どもたちが健やかに育ち、新時代を力強く生き抜く力を養いながら可能性を広げ、また、成長してからも郷土愛を持って大津町を支えてくれるような好循環を生むことを引き続き目指します。
人生100年時代を見据えたとき、町民の日々の暮らしの観点からは多くの方に末永く健康でいていただくことが大切であり、また、町財政の観点からは持続可能であるためにも、できるだけ若いうちから健康づくりの習慣を身に着けていただくことが必要です。
そうしたなかで、民間の力を取り入れた健康づくりと介護予防に向けた取組みとして、4月から、公募による「地域活性化起業人」として国内スポーツクラブ業界大手のルネサンスの職員が役場に着任し、全世代に向けた健康づくり事業の展開を始動します。長い実績のある大手企業のノウハウやブランド力、活力を生かし、既存の取組みを一層充実強化させるとともに、多くの町民の皆様が参加する仕掛けづくりを行っていきたいと考えています。また、現在健康づくりにあまり関心がない方にも動機づけとなるよう、新たにスマートフォン等で利用できる健康ポイントアプリを導入するなど、多方面からのアプローチにより町民の皆様の健康づくりを推進していきたい考えです。
また、日々の暮らしを守る相談支援体制の強化として、新庁舎移転に合わせ、地域包括支援センター、障がい者相談支援センター、くらしの相談窓口を役場1階に集約し、高齢者福祉、障がい福祉、生活困窮、ひきこもり、ヤングケアラーなど、複雑に絡み合った課題を抱えられる方が総合的に相談できる「ふくしの相談窓口」を開設しました。これまでの相談実績から、障がい福祉に関する相談に、複合的な課題が絡む事例が多いことから、令和4年度はその相談支援体制を強化し、相談窓口の全体的な機能強化を図ります。また、就労的活動支援コーディネーターの役割拡充等により、退職後のセカンドライフの充実に向けた取組みも推進していきます。
町民の皆様からご要望の多かったスポーツの森駅の設置可能性調査を昨年度行いました。この結果を踏まえ、令和4年度以降どう取り組んでいくかの検討を進めます。また、特色ある商業施設の誘致については、トップセールスも含めて複数の企業への訪問や折衝を行っているところであり、こちらも引き続き推進を図ります。
役場および肥後大津駅周辺に関しては、本年、ゾロ像が設置され、令和5年には南阿蘇鉄道の乗り入れも計画されていますので、町民や観光客による賑わいと活気を生む動線づくりに向けて、ハード・ソフトの両面から取組みます。特に役場近隣に関しては、駐車場も含めた庁舎工事が完了しました。現在、空き物件となっている地域包括支援センターや旧電算室はもちろん、まちづくり交流センター、歴史文化伝承館、オークスプラザの位置づけや、相互の役割・関連性も踏まえたうえで利活用を検討していますので、議会の皆様にもお示ししながら、令和4年度上期には新たな方向性を定めて動いていきたい考えです。
歴史・文化面においては、現在は学芸員として再任用職員と任期付職員を配置していますが、より長期的な視点や体制で事業を推進するために一般職の学芸員を新たに採用します。そうしたなかで、まずは住み暮らす皆様により深く大津町の歴史や文化を知っていただくために、歴史文化伝承館の展示の在り方や利活用なども再整理しながら、主屋の改修や交流広場の整備が完了した江藤家住宅をはじめ、町に点在する様々な宝の魅力をより多くの方に知っていただけるよう、引き続き図書館などとも連携して、主に町民の皆様に向けた企画や情報発信に努めます。
また、町全体の活気とにぎわいを維持向上させるために必要となるのが交通網の整備です。公共交通については、北部南部と町中心部を結ぶ乗り合いタクシーの利便性の向上と、中心市街地を回遊する新たな移動手段の導入を計画しています。昨年度から準備を進めており、令和4年度に国との調整を行いながら事業計画を立て、令和5年度に実証実験を開始するスケジュールで進めています。
なお、町内の複数個所で朝夕を中心に慢性的な渋滞が見られますが、新熊本空港ビルや南阿蘇鉄道のJR肥後大津駅への乗り入れ、またその先のTSMCの進出や中九州横断道路の開通などを見据えれば、更なる交通渋滞は必至です。そうした将来も念頭に置きながら、既に進行している町道の整備については引き続き円滑な用地交渉や工事進捗等に努めるとともに、新たな道路改良や新設に関しても検討・協議を進めていきます。
特に、中九州横断道路に関しては、早期の開通に向けて本年も複数回の要望活動を重ねてきたところですが、2月に国から発表がありました通り、国道325号杉水付近の大津西-合志区間までの延長4.7キロの追加での新規事業化に向けた手続きが開始されることとなりました。TSMC関連の動きもありますので、早期の完成に向けて、町としても国とも連携しながら円滑な事業進捗に努めるとともに、その他の国道、県道の整備と合わせて残りの区間についても、引き続き国や県への要望活動も行いながら推進を図ります。
大津町は農工商併進を推進してきており、これからも力強く継続します。農業に関しては昨年度、サツマイモ基腐病のまん延防止に向けた対策協議会を立ち上げ、対策費用の補助を行い、有害鳥獣対策として電気牧柵などへの補助の強化や地域駆除隊を結成する地域の支援を行いました。圃場整備に関しても令和4年度に事業採択申請を行う地域がありますので、今後もソフト・ハードの両面で、農業の振興を図ります。
冒頭にも述べました通り、TSMCの菊陽町への進出により大津町においても工場等の新設に向けた問い合わせが増加しておりますが、現状では民間所有の土地を紹介しており、町として提示できる用地は限定的です。このことから、令和3年度補正予算において、工業団地適地調査に向けた予算を計上させていただきました。適地調査や財政計画のシミュレーション、立地に係る将来分析なども行いながら、工業団地整備に向けた検討を加速化させていきます。
商工業については、このたび大津町中小企業・小規模企業振興基本条例を制定しました。中小企業や小規模事業者に対し、アフターコロナにおける下支えも見据えながら町内企業の維持活性に努めます。
また、新たな取組みとして、従来の製造業に加えてIT企業をはじめとした産業支援型企業の誘致を推進しており、昨年度はIT企業2社と立地協定を締結しました。令和4年度は更なる誘致を図るとともに、地場産業とIT企業との連携による相乗効果によってさらなる産業の活性化を図っていきたいと考えています。
観光においては、昨年度、観光協会に新規の地域おこし協力隊員、および地域活性化起業人としてANAからの派遣職員を配置しており、新たに就任した事務局長とも連携しながら観光振興を進めています。令和4年度は法人化した観光協会が本格的に始動することになりますので、より一層の活動を期待するとともに、町としましても、新たな観光モデルや体験型プラン、スポーツコンベンション等の創出に向けて観光協会や肥後おおづスポーツ文化コミッションをはじめとする各団体と協働して取り組んでいきます。
就任時には、協働の基盤となる多くの方々のご理解と信頼を得るためにも、「多様性のある行政組織づくり」と「組織内部の人材育成」を推進すると申し述べました。現在、民間出身の私と、副町長も県から来ていただいたことで、これまでとは違う外の空気が入り、職員の考え方にも変化が生じているものと感じています。私自身も相互の関係性のなかで学ばせていただきながら、今までの良さは維持しつつ相乗効果を発揮することで、引き続き多様性と活気ある組織づくりを進めていきたいと考えています。
職員の人材育成と人事評価に向けては、新たな制度・仕組みも導入しながら指導や評価、フィードバックを適正に行うことで、職員の成長を促すとともに、一層のやりがいをもって働ける体制を整えることで、町民の皆様にお届けする行政サービスの品質が向上する好循環を作っていきます。
また、昨年度から2か年計画で進めている役場の業務量調査も順次結果が挙がっています。令和4年度は町のDX計画も策定する予定ですので、調査結果を基に業務の効率化やシステム化、さらには外部委託なども検討・実施し、諸手続きのさらなるICT化を含めた町民サービスと役場の生産性の向上を同時に図りながら、限られた人的資源のなかで、職員がより町民と向き合い、皆様の暮らしの質の向上に直結する業務に集中できる体制づくりを進めていきます。
さらに、町民の皆様の信頼を得るためには健全な財政運営が必要不可欠です。令和4年度は公園施設長寿命化計画の見直しや公営住宅の整備方針の再整理、その他の町有施設のより有効な管理・活用に向けても具体的に進めていきます。また、ふるさと納税をはじめ新たな財源確保に向けても引き続き注力していきます。
なお、これまで述べさせていただいた政策・施策的な内容も含め、町の様々な情報を適切に発信・周知することも協働や町の活気創出に不可欠ですので、町全体、および暮らしや子育てなどの各分野の情報をより分かりやすく整理しながら、引き続き町広報やホームページ、LINEはもちろん、将来町の住民となり得る町外の皆様に向けても、情報発信を充実させることで、「町民に、より信頼され、愛される役場の実現」に向けて進めていきます。
以上、町政を推進するにあたり、基本的な考え方と今後のまちづくりにおける私の考えの一端を述べさせていただきました。
就任一年目を町政運営に邁進することができましたのは、大津町議会並びに行政区嘱託員をはじめとする地域の皆様のお力添えのおかげです。この場をお借りしまして、厚く感謝申し上げます。
今後も引き続き職員と一丸となって「世界で一番住みたいまち、住み続けたいまち」、そしてすべての人の人権が尊重され、多様性を寛容に受け入れることができる優しさであふれるまちづくりに取り組んでいきますので、議員各位並びに町民の皆様のより一層のご指導、ご協力をよろしくお願い申し上げます。