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【議会だより特集】志は高く、ハードルは低く
第2回 選挙にはどのくらいお金がかかる?〜大津町の場合〜
議会だより(第107号)で掲載の「志は高く、ハードルは低く」のコラム。
掲載しきれなかった実際の数字を含めたもっと詳しい内容をご覧ください。
(議会だより掲載記事はこちらから)
来年1月以降に予定されている大津町議会議員選挙を、前回(令和3年2月)のように無投票にしないよう、少しでも多くの人に”その気になってもらう”ため掲載する本コラム。
誰もが関心をもつと思われる「選挙にはどのくらいお金がかかる?」を取り上げます。
(なお、内容は大津町議会議員選挙の規模・事例を想定したものです。)
立候補準備費用と選挙運動費用
「選挙活動の費用」は、実際に立候補して選挙運動を行う費用です。(図1 黄色の部分)
選挙活動の収支は、選挙終了後に提出される「選挙運動収支報告書」で確認できます。(公職選挙法第189・192条)
また、支出は「立候補準備の費用」と「選挙運動費用」に分類されています。
選挙活動の方法は立候補者それぞれで大きく違います。
例えば、「選挙事務所を借りるか、自宅を事務所とするか」や「選挙カーを使うか、使わないか」、さらに「選挙カーに車上運動員(いわゆるウグイス嬢)を乗せるかどうか」などが、選挙活動の費用に大きく関わってきます。
そうした違いはありますが、報告書では主に図2のような費用が計上されているようです。
使える額には上限がある
選挙活動の費用には上限があり、その額は以下の式で算定されます。
選挙人名簿登録者は、有権者数と概ね同じです。
大津町の場合、有権者数は2万8千人くらいですので、この式に沿って計算すると、約286万円ということになります。
「えっ、そんなに使うの!」と思われるかもしれませんが、これはあくまで上限額でこれ以上使ってはいけないという額です。
一部は公費で負担する
令和2年の公職選挙法の改正で、町村議会議員選挙でも、選挙費用の一部を公費で負担できるようになりました。
これは、選挙に係る候補者の費用負担を軽減することで、立候補をしやすい環境を整える、「議員のなり手不足」の対策の1つです。
公費負担の対象となるのは図2の中で、赤文字で示したもので、それぞれ下の表のように上限が決まっています。
例えば、選挙カーを個別契約方式で、他の項目もすべて限度額まで使用した場合、公費負担の額は約55万円になります。
もし、無投票で、選挙運動が1日だけだった場合、選挙カーの利用は1日分になりますが、ポスターとビラはすでに印刷されていますので、約41万円ほどが上限額となります。
供託金は15万円
「供託金」は選挙に立候補するにあたり、法務局に一時的に預けるお金で、町村議会議員選挙の場合、金額は15万円です。
この供託金は、一定の得票数があれば返還され、また不足すれば没収されます。必要な得票数(供託金没収点)は下の式で算定されます。
なぜ、供託金は必要なのでしょうか。
例えば、東京都知事選挙などでは、泡まつ候補(当選の見込はなくても、自身の主張を述べるためだけであったり、単なる売名行為などを目的とした候補者)が多数立候補します。しかし、このような候補者にも選挙運動の公費負担は行われます。
供託金には、こうした立候補の乱立を抑止する効果があり、また供託金を没収することで、負担した公費の一部を候補者に負担させることにもなります。
平成29年の選挙の場合で、必要な得票数(供託金没収点)を試算してみると、
となり、85票以上が必要ということになります。
実際、この選挙の最低得票数(落選)は168票でしたので、当選を目指した健全な立候補であれば供託金没収の可能性はかなり低いと考えられます。
実際、どのくらいかかる?
下表は、平成29年、令和3年の2回の選挙の収支報告をもとに、各候補者の選挙活動の費用をまとめたものです。
平成29年では、公費負担はありませんでした。
平均は67.4万円でしたが、突出した最大額の187万円を除けば、約60万円ということになります。
一方、令和3年は公費負担があり、また選挙戦は1日だけでしたので、選挙カー分の公費負担は1日分だけです。
これを、5倍にした試算では、公費負担の合計平均額は、31.4万円です。
投票のあった(5日間の選挙戦)、平成29年にもしこの公費負担があったとすれば、選挙費用の平均は30万円以下になっていたと試算できます。
確かに、選挙にはそれなりの費用はかかりますが、かといってとんでもない多くのお金が必要なものでもありません。
この記事は、あくまで過去2回の大津町議会議員選挙の規模と事例をもとに試算を重ねたものですので、他の地域や規模の選挙では同じような考え方は成り立ちませんが、大津町でその気になっていただくため、参考にしていただけることを期待して執筆したものです。